2007年(平成19)9月に施行された「金融商品取引法」(金商法)の第29条には「金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができない」と定められている。証券会社は金融商品取引業としてこの規定に従い、登録に際しては、商号、資本の額などを記載した登録申請書を財務諸表などの添付書類とともに、内閣総理大臣に提出しなければならない。これを受けて、内閣総理大臣は証券会社登録簿に登録することになる。申請先などが内閣総理大臣となっているのは、証券会社の所管官庁が内閣府の外局である金融庁であり、内閣府の長が内閣総理大臣だからである。
証券会社については、第二次世界大戦前から免許制がとられ、戦後も1947年(昭和22)制定の「証券取引法」(証取法)では免許制であったが、1948年にアメリカに倣って登録制に改められた。その後、1965年の証券不況時に証券会社の破綻(はたん)が相次いだことから、証券会社の経営安定と投資者保護の観点から、1968年より免許制に移行している。それから30年を経過した1998年12月に、日本版金融ビッグバンに絡んだ「金融システム改革法」の一環として証取法が改正され、登録制に復帰した。その後、証取法は2006年の改正により金商法に名称変更され、現在に至る。
2007年末現在で証券会社の概況をみると、全国の証券会社数は、証券取引所(金融商品取引所)正会員業者(全国5か所の取引所のいずれかで取引が可能な業者)が128社(うち外国業者13社)、非会員業者が188社(同17社)で、合計316社(同30社)となっている。証券会社数は、近年、新規参入や合併、廃業などで多少の増減が認められるが、総数では大きな変化はみられない。しかし、本支店数(1992年末の3072から2007年末の2270へ)や役・社員数(同14万8306人から同9万9139人へ)は、バブル崩壊後の厳しい経営環境を反映して急減している。
[高橋 元]
『大和証券研修部編『証券会社と証券市場がわかる本』(1989・HBJ出版局)』▽『杉村富生著『証券会社2004年度版』(2002・実務教育出版)』▽『塚崎公義、山沢光太郎著『初心者のためのやさしい金融――基礎からわかる78のキーワード』(2003・東洋経済新報社)』▽『杉村富生著『比較日本の会社 証券会社』新訂2版(2007・実務教育出版)』
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証券業を営むことについて大蔵大臣の免許を受けた株式会社(証券取引法2条9項)。証券業務は,銀行,信託会社その他政令で定める金融機関が例外的に営む場合のほかは(2条8項,65条),証券会社でなければ営んではならず(28条1項),証券会社は,有価証券に関する業務その他の証券業に関連する業務で大蔵大臣の承認を受けたものを除き,証券業以外の業務を営んではならない(43条)。
証券会社が大蔵大臣の免許を受けるためには,業務を健全に遂行するに足りる財産的基礎,業務を公正・的確に遂行できる知識・経験を有する人的構成および地域における経済的合理性の免許基準に適合するとともに(31条),一定の免許拒否要件に該当しないことを要する(32条)。そして,証券会社が資本の額を変更し,業務の方法を変更するなど一定の基本的事項の変更等をなすには大蔵大臣の認可を要する(33,34条)とともに,大蔵大臣は,証券会社が法令に違反する等の場合には,証券会社の免許を取り消すことができる(35条)。
証券会社は,顧客に対する投資勧誘について,虚偽または誤解を生じさせる表示をし,損失負担または特別利益の提供を約束してはならない(50条,50条の3〈証券会社の健全性の準則等に関する省令〉2条1,2号)のみならず,顧客の知識・経験および財産の状況に適合しない投資勧誘を行ってはならない。また,証券会社は,顧客から有価証券に関する注文を受けたときは,自己が相手方となって売買を成立させるかまたは媒介・取次ぎもしくは代理によって売買を成立させるのかの別を明らかにする(46条)とともに,同一の売買について本人となると同時にその相手方の取次ぎまたは代理をなす者となることができない(47条)。さらに,証券会社は,有価証券の取引が成立したときは,遅滞なく,取引の種類,約定(やくじよう)月日(取引契約締結月日),銘柄,数量,金額等を記載した取引報告書を作成して,顧客に交付しなければならない(48条)。
証券会社の財産状態については,取引損失準備金(57条)および証券取引責任準備金(59条)の積立てが要請されるのみならず,財産の状況が自己資本規制比率についての基準,資産の保有状況についての基準または純資産額等についての基準のいずれかに該当した場合においては,大蔵大臣が証券会社に対して是正命令を発することができる(54条2項)ものとされている。
→証券業
執筆者:神崎 克郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
(熊井泰明 証券アナリスト / 2008年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 株式公開支援専門会社(株)イーコンサルタント株式公開用語辞典について 情報
…証券の新規発行の引受業務を中心に,長期資金調達を図る証券発行者と投資家との間の仲介業務を主たる業務とするアメリカの証券業者のことである。その伝統的業務は,証券の公募発行の引受け,証券の私募発行の仲介,企業の合併・買収の仲介,プロジェクト・ファイナンス(ある特定の投資計画に対して行う資金貸付け),既発行証券を対象とするエクスチェンジ・オファーの仲介,その他企業の金融上の諸問題のコンサルティング業務などであるが,今日では大部分の業者は,こうした企業金融業務を中心にしつつも,公社債・株式の流通市場における委託売買業務やディーラー業務をも幅広く営み,総合証券会社となっている。沿革的には,南北戦争時に大量に発行された国債の引受け・販売を契機として専業として成立し,その後19世紀後半から20世紀初頭にかけての鉄道建設ブーム,企業の集中・合併など産業再編成ブーム,新興産業の発展の過程のなかで本格的に発展した。…
※「証券会社」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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